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黒沢美香&大阪ダンサーズ「jazzzzzzz-dance」@Art Theater dB

黒沢美香さんは、石井漠さんのお弟子さんのお嬢さんにあたる人だそうです。石井漠さんは日本のモダンダンスのまさに創始者と言える人で、20年代にヨーロッパとアメリカをツアーし、アンナ・パブロヴァやニジンスキーと並ぶと評せられたそうですから、全くもって大変な方です。そのお弟子さんのお嬢さんとして、子ども時代から舞台に登り、10歳で全国舞踊コンクールを受賞。以来幾度となく海外ツアーをこなし、パニョレ国際にノミネートされ、ダムタイプやキュピキュピとも共演する、といった具合で、50年間踊りっぱなし。モダンダンス、ポストモダンダンス、コンテンポラリー・ダンスと呼び名が変わっても踊り続ける、ほとんど日本のダンスの生き証人と言える方です。

http://www.k5.dion.ne.jp/~kurosawa/mika_profie.html

大阪ダンサーズはそんな黒沢さんを慕って、ワークショップに集まってきたメンバーを集めた、いわば関西在住の黒沢シンパが集う梁山泊のような集団と言えるでしょう。「jazzzzzzz-dance」とは、ご本人の言葉を借りれば「ジャズダンスのjazz」ではなく、「jazz音楽の仕組みを尊敬してのタイトル」であり、「zの数は公演のたびに増えていく」のだそうです。最初聞いたときはさっぱり意味がわからなかったのですが、公演を見て納得しました。まさにその通りの内容でした。

http://www.db-dancebox.org/fl_sc/sc_p/sc_p_0704_kuro.htm

舞台は最初、各ダンサーが身をよじらせながら即興とおぼしき振り付けで入場してくるところから始まります。BGMには6拍子のリズムが、恐らくは昔懐かしいTR-808とおぼしき音色のリズムボックスでループしています。当初は13名のダンサー各自がこのリズムを無視するようなしないような、同期するともしないともわからぬ曖昧なリズムで踊っているのですが、ふとした拍子にあちこちでリズムが発生し、突然2人が全く同じ振り付けをユニゾンで踊って別れていったり、それが今度は3人になったり、微妙に食い違う踊りを踊ったりということを繰り返し、最後は全員がユニゾンに参加して群舞を踊る。それは混沌の中から秩序が生成するような、不思議な感銘を覚える光景でした。

ここからは私の推理……というほどでもないのですが、恐らく先にユニゾンの踊りを……たぶん16小節分くらいの、メインテーマにあたるダンスを組み立てておき、入場時はそれをバラして、即興で踊らせながら入場させたのでしょうね。で、気分が乗ってきたときに各自メインテーマを踊り始める。メインテーマをあらかじめ決めておき、即興で間をつなぎ、ソロとソロを競わせたあとで、メインテーマに再び回帰するのは、ジャズの基本的なスタイルです。まさに「jazz音楽の仕組みを尊敬」しつつ作られたダンスだと言えるでしょう。13名のダンスはそれぞれ個性に富んで美しく、それが群舞に収斂していくさまは、非常にスリリングな体験でした。

さて、ここからが少し考えどころなのですが、こうした「jazz音楽の仕組みを尊敬」しつつ作られたダンスにおいて、テンポはどういう役割を果たすのでしょうか。というのも、このダンスでは群舞になっても、全員が正確に同じテンポで踊ることがないからです。「メインテーマに回帰する」ことがテーマなわけですし、わざわざリズムボックスを使うほど「正確なリズム」を暗示してるわけですから、テーマに戻ったときはきっちりリズムをキープして欲しい……という願望は、ダンスに不慣れな私の未熟さなのでしょうか。事実、どうやらコンテンポラリー・ダンスの世界では「音楽のリズムに従属するのはダサいこと」とされているようで、桜井圭介さんがこんなことを書いておられます。

http://www.t3.rim.or.jp/~sakurah/mika.html

いや、ずれるのは良いんですよ。たとえば音楽でもロックンロールなんて、シャッフルとジャストのリズムを行ったり来たりしますしね。それまでの普通の音楽的常識から見たら、あんな暴力的なズレ方は御法度だったでしょう。でもね、もう少し振れ幅を小さくするとか、ズレ方そのものに約束を作るとか、そういう微妙なところを愉しみたいと思うのは、よくないんでしょうかね。このへんよくわかんないので、今後考えたいなと思う部分です。

まぁ、以上は昔ちょっと音楽やってた私の個人的なぼやきで、基本的に美しい公演でした。何より私のまぶたに焼き付いて離れないのは「しげやん」こと北村成美の、臨月の体で踊るダンス。お腹をかばってそれほど大きな動きはしないのですが、この人は客あしらいが抜群に巧い。客いじりすれすれのところまで客席に寄って仕掛ける駆け引き、そして何よりあのお腹で踊る豪快さ! それと、ピンヒールを履いてお化粧ばっちりしてセクシーになった「きたまり」。最初別人かと思ったよ。たまにはああいう「きた」を見るのも良いですね。あとは名前をなんと仰るのか、凄い腹筋の綺麗な方がいたなぁ! 恐らくご本人もそれを意識しておられるのか、ばっちり腹筋が見える服を着てらしたけど。うん、すごいいいダンサーを集めた、良い公演でした。これが2週間足らずでできあがる時点で既に奇跡なわけで、これ以上を望むのはやっぱし贅沢ですね。うん。これでいいのだ。

2007.4.13 (fri) -15 (sun)
黒沢美香&大阪ダンサーズ公演
jazzzzzzz-dance
Art Theater dB


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