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京都・ダンス・身体

久々に更新です。昨日は京都の芸術センターに、「ダンス批評ワークショップ」というのを受講しに行ってきました。講師は國學院助教授の高橋大助さん。このワークショップは、「京都ダンスプロダクション」という非常に息の長いプログラムの一環として行われているもので、昨日はメンバーの書いた批評の合評会でした。京都ダンスプロダクションとダンス批評ワークショップについては、下のリンクを見てください。

http://www.kac.or.jp/dance/production.html

要するに、実作者と制作者と批評家の養成を、トータルに一つのプログラムとして有機的にやっていくというもので、かなり野心的な試みです。私は美術の分野で細々と仕事をしていますが、こんな長期にわたる緻密なシーン全体育成のプログラムは、少なくとも関西では見たことがありません。

美術手帖でダンスの特集が組まれて以降、ダンスは熱い分野になっていると言われています。が、なかでも京都を中心とする関西のダンス及び身体表現は、いま、ものすごく熱い状況にあると思います。一つの証左がこの一連のプログラムですが、それだけではありません。京都にはコンテンポラリー・ダンス専門のNPOであるJCDNがあったり、ダンスに非常に強い京都造形芸術大があったり、身体・舞台表現と美術の双方を行き来している、高嶺格さんという素晴らしいアーティストがいたりします。また、今回このプログラムで見た三組は、いずれも高い水準の作品を作っていましたし、なかでも京都造形からは「きたまり」という非常に優れた個性が出て来ました。一方神戸では昨年、神戸女学院に、音楽学部音楽学科、舞踊専攻というコースが新設されています。何かが始まりつつあるという印象を、とても強く感じます。

http://www.kobe-np.co.jp/rensai/cul/309.html

実はダンス批評の分野では、関西は既にネット上で、大きな才能を一人産み出しています。「コンテンポラリーダンス目撃帖」というサイトを続けている、cannon26さんです。この方のサイトは個人ブログとしては驚くべきことに、「コンテンポラリー・ダンス」でググってみると、なんと第3位に出てくるのです。そして今回の批評ワークショップには、このcannon26さんも参加していたのでした。彼も私も神戸在住で、それが京都のダンス批評セミナーで出会う。この密度に反応できなければ嘘です。

http://d.hatena.ne.jp/cannon26/

関西には演劇からパフォーマンスにはみ出していった維新派があり、身体表現と美術を架橋したダムタイプがあり、舞踏の伝統を革新しつつ守り続ける大駱駝艦があります。また美術に目を向ければ、自らがモンローや三島に扮して写真を撮る森村泰昌さんがおり、特殊メイクやCGで少女を老女にしてしまうやなぎみわさんがおり、メイクで無数の匿名の人になってしまう澤田知子さんがおり、頭を半狩りにしてハンガリーに行ったり、女装してバーに立つパフォーマンスをやったりする榎忠さんがいます。哲学の分野ではファッションと皮膚の問題を語る鷲田清一さんや、身体論を積極的に語り続ける内田樹さんがいます。身体をメディアとして捉え、そこで何かを語り、そこから何かを読み取る伝統のようなものがもともと関西にはあり、それがいまダンスを巡る状況の中で、激しく活性化しているのじゃないかという気がします。

体ってなんなのか、体をどう見てどう考えたらいいのか、私には今のところ全くわかりません。ただなにか熱い、何かが起こりそうな気配が、いまの関西には濃厚に漂っています。この感じは、私が初めて関西にやってきた頃の美術界、いわゆる「関西ニューウェーブ」と呼ばれたあの時代、中原浩大さんや森村さん、椿昇さんが次々と出て、「美術界は西高東低」と言われた時代の何かと、極めてよく似ていると感じます。理屈じゃなく、匂いが、熱っぽさが似ているのです。そしてあのころと決定的に違っているのは、自分自身がその熱気のただ中にいるという実感です。

私はたまたま少年時代に福岡にいて、いわゆる「めんたいビート」が東京に去っていく最後の瞬間を目撃しました。その後海洋堂やDAICON3など、関西オタクシーンの盛り上がりと関西ニューウェーブのシンクロ現象を見て関西に来たのですが、結局それが全面開花したのは、2000年以降の東京でした。何かの盛り上がりの中に身を置くという体験は、本当にこれが生まれて初めてです。そして「やっと間に合った」という、何かむずがゆい感覚が、自分の体内にあります。さしたる根拠も明確なビジョンもなく、ただとてもワクワクしています。そしてそれが「何かが始まるとき」の感覚なのだろうと思います。


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