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伊波晋『handance 海蝉』@京都芸術センター

このブログでは基本的にダンスの公演レビューをつけていくわけですが……我ながらなんでコンテンポラリー・ダンスに興味があるのか、ちょっとまだよくわからないんですよ。はい。

だってさ、自分では全く踊る趣味なんかないんですよ、私。クラブも行かないし、盆踊りにも参加しないし。つか、「体を動かすと気持ちが良い」という、一般的によく言われる台詞の意味すらわからない。野球とかスポーツもしないし、ジムにも行かないし。体があるのがしんどい。体って私にとっては「ノイズ発生源」なんです。肩が凝ったり腰が痛くなったり性欲を生んだりして、不要なノイズを発生するもの。邪魔でしょうがない。

そういう私にとって、伊波晋(いは・しん)の「handance 海蝉」は、秘孔を突いてくる作品。ストーリーはとても明快。タンクトップに両腕を突っ込んだ若者が出てきて、抜こうとするけど出てこない。必死にもがくが、やはり抜けない。さんざん暴れた挙げ句、ようやく右腕が出てくる。そして、やっと出てきた右腕で、左手を引き出す……。

ふつうこういうあらすじのダンスを作ったら、最後は自由になった両腕で自由を謳歌して「身体の喜び」を歌い上げそうなものだけど、伊波晋はそうしない。せいぜい体を掻くとか顔をこするとか、ごく日常的な身振りをいくつかして、あとは倒れてしまうだけ。なんなんだろう、この身体に対する無頓着さは。ひょっとして私と似たような身体センスの持ち主なのかしらん?

伊波晋はもともとダンサーじゃなくて美術作家なのらしい。横浜トリエンナーレにもダンサーとして出てるらしいから、若手としてはすごいキャリアだよね。
http://www.awabar.com/
「handance」というのも自分の体がうまく動かないので、手だけで踊るダンスとして構想されたのだとか。なるほど、なんとなく納得。せっかく自由になったといっても、身体の自由さをもてあましちゃうんだね。

私は日常生活では、ほとんど身体を使わない。せいぜいキーボードを打って画面を眺めるだけ。で、それを疑問にも何にも感じていない。一日中座りっぱなしで、足を使った移動が億劫で仕方がない。でもこれってたぶん、とてもいま多いはずのライフスタイルですよね。肩こりやなんかに違和感を感じることはあっても、いざ自由にされたら何に使って良いのかわからない。そういう身体のありようを、ポンと舞台上に載せたらどうなるか? たぶん「handance」みたいな作品になるんじゃないのかな。

ちなみにタイトルの「海蝉」というのは、作者が勝手に考えた海の中の昆虫で、実在する魚とは別なものらしい。あ、そうするとシャツから腕が抜けるのって、蝉の脱皮なのかしらん? 抜け出したらすぐ死んじゃうのは蝉だから? うーん。今度彼に会うことがあったら聞いてみよう。

伊波晋 「handance 海蝉」
振付・映像・音・出演: 伊波晋
歌: 金城理子 山本弥生 神里亜樹雄 伊波晋
京都芸術センター
2007年3月24日(土)18:00


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